2013年5月18日土曜日

三島由紀夫と大神社展

三島由紀夫の「豊饒の海」は、全四巻からなる長編小説。第一巻の「春の海」は、妻夫木聡と竹内結子主演で映画化もされました。第四巻「天人五衰」の最後で聡子が放ったひとことはとても衝撃的で、初めてこの作品を読んですでに30年の歳月が過ぎていますが、いまだに私の心に強く残っています。三島は第四巻「天人五衰」の入稿日に、あの市ヶ谷駐屯地に出掛けたそうです。
トーハクで開催中の「大神社展」、2回目に出掛けてきました。
今回の展示で私が一番注目したのは、国宝「北野天神縁起絵巻」です。


京都、北野天満宮に伝わるこの絵巻は八巻が国宝に指定されていますが(下絵一巻はつけたり)、今回は八巻が展示されています。
日本史の教科書などであまりにも有名な六巻ではないのが少々残念ですが、それでも初めて見る国宝であり、期待が高まります。
今回は2回目ということ、そしてかなり混雑していたこともあって、多くの展示品は三列目あたりから駆け足で見ましたが、この北野天神縁起絵巻については最前列でじっくりと鑑賞しました。

天人五衰」とは、死を迎える天人に現れる5つの兆しのことで、諸説はありますが、衣服や体の汚れ、脇の下からの発汗などとされています。
そして、北野天神縁起絵巻の第八巻にはこの「天人五衰」の場面が描かれています。中央の場面では天人たちが華やかに活動する様子が描かれていますが、最後の場面では死を迎え、やがて朽ち果てていく天人たちの様子が描かれています。六道最高位である天界で長寿をおう歌する天人たちもいつかは衰える日が来る。北野天神縁起絵巻の作者が描きたかったのは、世の「はかなさ」だったのでしょうか。

今日は気温も上がり好天に恵まれました。大神社展が開催されている平成館を出てからは、もう一度「豊饒の海」を読みたいという思いに駆られながら帰路につきました。

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