2014年5月3日土曜日

キトラ古墳に法隆寺展 大忙しの春

東京藝術大学大学美術館での「法隆寺祈りとかたち」展、トーハクで開催の「キトラ古墳壁画」特別展や毎年恒例の新指定国宝・重文展示会など、文化財ファンにとって楽しくも忙しい季節がやってきました。この日回った展示会について報告します(2014年4月26日)。

■畠山記念館 茶道美術の玉手箱
畠山記念館は、荏原製作所を創立した実業家畠山一清が収集した美術品を公開するために設立された美術館。白金台の閑静な住宅街にひっそりとたたずむ美術館で、6件の国宝を所蔵しています。今回は未見の国宝である「大慧宗杲墨蹟」が主たる目的です。


畠山記念館入り口
大慧宗杲は中国の南宋時代の臨済宗の僧侶であり、この墨蹟は知人に送った書簡で、来書がないこと、自分は健勝であることなど日常の些事を記した、南宋時代著名禅僧の数少い遺墨の一つとされています。
茶道美術の玉手箱」というだけあって、茶道具の展示が主ですが、歴史の教科書にも出てきた「今鏡」や古田織部の焼き物などの展示もありました。日本史や古典文学の教科書に出てきた文化財や書などの実物を見るのも、博物館・美術館巡りの楽しみとなっています。

■キトラ古墳の前に藝大美術館へ
昼食をはさんで上野にやってきました。
ツイッターでキトラ古墳の混雑状況については承知していましたが、トーハクの正門前からも行列が見えていたので、藝大美術館に向かいました。


「キトラ古墳壁画」に並ぶ人
法隆寺 祈りとかたち」は、東日本大震災や新潟県中越地震復興などを祈念して開催された展覧会で、他の会場でも別日程で開催されます。
目玉はなんといっても国宝の毘沙門天立像吉祥天立像です。会場の一番奥に左右対称に並ぶ夫婦の仏像。普段金堂に安置されているため細部を見ることはできませんが、今回は背面を含め細かいところまで間近にみることができます。
こぢんまりとしていながら絶妙な均整を保った美しい仏像で、彩色も確認することができました。まさに、平安時代の仏教美術が凝縮されているようにも感じられました。
ほかにも、東京藝大と法隆寺との関わりなど、興味ある展示がありましが、なかでも日本画の大家たちが模写した金堂壁画は圧巻でした。

■「キトラ古墳壁画」に日本人の美意識と美徳をみた!
藝大美術館からトーハクに移り、「キトラ古墳壁画」の最後尾に並びます。案内では40分待ちでしたが25分ほどで会場に入ることができました。

「キトラ古墳壁画」の案内板
最初に展示されているのは四神(朱雀、白虎、玄武、青龍)と「天文図」の複製陶画。なかなか前に進まず大変でしたが、自分自身予備知識がなかったので最前列でじっくりながめ、解説もしっかり読みました。
⇒もし過去に見たことのある方や2回目の場合はこの部分は飛ばして構わないと思います。

はやる気持ちから、続いて展示されていた古墳出土品は軽く飛ばして、いよいよ本物の展示を待つ列へ。しかし、ここからも暫く待たされてようやく本物の前にたどり着きました。

本物の壁画は、必要最小限の部分のみが切り取られて思った以上に小さなものでした。じっくり見たいという思いと、「早く進んでください」との案内とのジレンマの中、ゆっくりと、しかし確実に進みながら鑑賞します。
一部汚れて見にくい部分もあり、最後に展示されていた十二支のうちの「子」と「丑」は残念ながら何が描いてあるのかほとんどわかりませんでしたが、これだけの壁画がよくこれまで残っていたものと感心してしまいます。描かれた時代のわが祖先たちの美意識というものを感じずにはいられませんでした。やがて会場の外に出てみると、すでに待ち行列はほとんどありませんでした。

「キトラ古墳壁画」のあとは、このたび新たに指定された国宝・重要文化財などを鑑賞して帰路に着きましたが、充実した1日に大満足の日となりました。
大災害の時でも食料や水の配給の列にきちんと並んで待ち、新幹線の乗り場ではきれいに整列して順番を待つ。「キトラ古墳壁画」を1時間掛けて見る人たちに、そんな我々の美徳のようなものを感じた日でもありました。

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